歯のエナメル質は、人間の体の中で最も硬い組織です。
物の硬さを量る単位として、硬さを表した「モース硬度」というものがあります。硬さの基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「たたいて壊れるかどうか」の堅牢さではありません。
以前は10段階で硬さを区別していましたが、現在では15段階に分けられています。
人の歯は、モース硬度だと「7」です。モース硬度7とは、水晶と同じくらいの硬さです。
身近にある傷がつきにくいものをランキング形式にしてみました。
ダイヤモンド | 一番硬い素材 | |
セラミック | 人工歯に使われる素材 | |
歯のエナメル質 | 人の骨の中で一番硬い部分 | |
4位 | スマホなどの液晶画面 | |
5位・6位 | 100円玉 | |
カッター、ナイフ、ハサミ | ||
7位 | 鉄 | |
8位 | 10円玉 | |
9位 | 大理石 | |
10位 | 人の爪 | |
番外 | 鉛筆(4B) の芯 |
※一般的なものを対象としています
歯はいくつもの組織から成り立っており、それぞれの組織の特徴や役割について説明します。

- エナメル質 歯の表面で最も硬い部分です。体の中でもいちばん硬い組織で、モース硬度6~7です。
歯に対する様々な外部刺激から、歯髄(歯の神経が通っている部分)を守るということが、最大の役割です。 - 象牙質 エナメル質よりは軟らかく、骨よりは硬い組織で、モース硬度は5~6です。
象牙質に刺激が加わると、痛みを感じます。象牙質は僅かに再生能力があり、歯髄を保護するように働きます。 - 歯髄 歯の中心部に流れる神経が通っている組織です。歯の痛みを感じるのは、主にこの歯髄です。
象牙質の形成や、歯への栄養の供給、炎症などの刺激に対する防御反応などの役割があります。 - セメント質 歯根の象牙質の表面を覆っている組織で、モース硬度は4~5です。
歯根膜と呼ばれる結合組織をつなぎとめる役割をしています。 - 歯根膜 歯と歯槽骨を繋ぐという役割以外にも、「噛み応え」を感じるという役割や、歯に伝わる咬合力を調整するという役割もあります。
- 歯槽骨 歯を支えている骨のことです。
歯周病で一度吸収してしまった歯槽骨は、どんなに良い治療を行なったとしても回復が非常に困難です。 - 歯肉 歯ぐきのことです。
歯ぐきは歯槽骨を保護する役割をしています。ここに炎症を引き起こした状態を歯肉炎といいます。
モース硬度 | 標準物質 | 代表的な素材 |
1 | 滑石 | 黒板に使用するチョーク |
2 | 石膏 | 石膏ボードや建材など |
2.5 | 象牙、純金 | 小判、延べ棒など |
3 | 方解石、大理石 | 珊瑚 |
3.5 | 銅製硬貨 | 10円玉 |
4 | 蛍石、鉄 | カメラや望遠鏡のレンズなど |
4.5 | 製鉄 | 釘 |
5 | 燐灰石、ガラス | デンタルインプラントや人工骨の原料など |
5.5 | 炭素鋼 | ナイフの刃、ハサミの刃 |
6 | オパール | 宝飾品、装飾品など |
6.5 | 長石、翡翠 | 宝飾品、装飾品など |
7 | 水晶、歯 | 光ファイバー、電子部品など |
7.5 | 鋼鉄 | 工業用機械、鋼製工具など |
8 | トパーズ | 宝石 |
8.5 | キャッツアイ | ボタンやネクタイピン、指輪などの装身具 |
9 | 鋼玉、セラミック | 宝石、精密機械の軸受けなど |
10 | ダイアモンド | 宝石、研磨材、半導体など |
上の表にもあるように、人の歯は、鉄よりも硬いことがわかります。