歯が再利用できる時代

更新日2022.05.17

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再生医療はここまできている

再生医療とは…
髪の毛や皮膚などにある細胞から、神経や骨などを人工的に作り出し、人の組織を修復する治療方法のこと

IPS細胞やES細胞は1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。これらは万能細胞と呼ばれております。
身体の組織を分化することができるため、新たに組織を形成しなおし、失われた歯も作りだすことができると言われております。

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抜けてしまった歯には驚くべき力があった

幼いころ、抜けてしまった乳歯は、床下や屋根の上に投げていた方も多かったのではないでしょうか。

また親知らずを抜歯した後は、記念に持ち帰った方も多いと思います。
この抜けてしまった乳歯や抜歯した親知らずには、歯髄細胞という非常に良質な幹細胞が含まれています。

幹細胞とは…
分裂して同じ細胞を作る能力と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞のこと

乳歯や親知らずにある幹細胞は硬い歯に守られているため損傷が少なく、新鮮な状態を保つことができる上、増殖能力が高く短期間でたくさん作り出すことができます。

さらにIPS細胞は、皮膚より乳歯や親知らずの方が、より効率よく採取できることも判明してきました。
歯髄細胞から作られたIPS細胞は、日本人の移植に適した型を20%の割合で持つとも言われており、大きな期待が寄せられています。

歯の保存は歯の銀行へ

抜けてしまった歯は、放置しておくと腐ります。歯髄細胞を生かすには、抜けた状態で保存しておく必要があります。

そこでCAS(Cells Alive System)という冷凍技術を用い、ティースバンク(歯の銀行)で20年から最長40年もの間、冷凍保存しておくことができます。

ティースバンク(歯の銀行)とは…
抜けた歯を将来的に移植するために、冷凍保存を行う機関のこと

抜けた歯の歯根膜が残っていれば、事故や老化で歯を失った際など、保存した歯を再生することができると言われております。

また歯だけではなく、神経性の病気や骨、軟骨などの修復にも対応できると言われております。

抜去歯の冷凍保存の流れ

抜歯した歯(抜去歯)は、液体チッソ中で半永久的に冷凍保存されます。

再生医療研究所と連携している歯医者を探す

冷凍保存ができる条件は、下記の通りです。
●歯の銀行で保存できるのは「健康な歯」のみ
●かなりの時間が経過してしまった歯・大きな虫歯や歯周病がある歯は保存することができない
●糖尿病・肝臓病・骨形成不全・骨粗鬆症などの方は利用できない場合がある

抜去歯を再生医療研究所へ届ける

抜去歯を当日中(遅くとも24時間以内)に再生医療研究所まで届けます。
冷蔵状態で歯を傷つけないように運びます。

実体顕微鏡で歯の検鏡と画像の保存

歯根膜等の状態を検査し歯のデジタル画像を記録しておきます。

クリーンルームで抜去歯を処理

クリーン度の高いクリーンベンチで抜去歯を適切に前処理します。

クリーンベンチとは…
細胞や微生物を取り扱う際に、埃や雑菌の混入(コンタミネーション)
を防ぎ、無菌状態で作業するための装置のこと

抜去歯を冷凍保存

抜去歯は完全密封型の特殊プラスチック容器に封入します。
その後、CASという冷凍技術で-196℃の液体チッソの入った
タンクの中で抜去歯を半永久的に保存します。

歯の保存IDカードの発行

冷凍保存した歯の情報はデータで一元管理します。
発行された「歯の保存IDカード」は、必要なときがくるまで
大切に保管してください。

必要な費用

歯を冷凍保存している再生医療研究所は全国にいくつかあります。
下記は神奈川県を参考にしております。費用はあくまで目安としてください。

ティースバンク(歯の銀行)に必要な費用

血液検査…¥30,000
歯の検査費用…¥40,000/本
画像撮影料およびデータ保存料…¥8,000
容器や保存処置料など…¥10,000
輸送費…神奈川県内では¥5,000、県外は¥33,500
10年間の冷凍保存…¥90,000/本
保存期間の延長(年間)…¥3,000/本

別途、歯の保存IDカード発行料と歯の冷凍保存に関する相談料が必要
(抜歯の治療費や移植・再生医療にかかる医療費は含まれていません)

県内の方で、10年保管の合計は、およそ¥200,000/本
※保険適用外です

まとめ

抜去歯の冷凍保存は以前から行われており、歯を移植する技術はすでに使われるようになりました。
今後は、再生医療による失われた箇所の修復も時間の問題と思われます。
将来のことを考えて、抜去歯を保存しておく考え方を見直さなければならないかもしれません。

一般的にはまだまだ浸透してはおりませんし、費用を考えてしまうと簡単なことではありません。
しかし歯を再利用することが当たり前となり、高齢になっても健康な歯でいられる時代はすぐそこまで来ているのかもしれません。

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