日本の予防医学に対する注目は高まっており、子どもの歯磨きに関しては特に関心が高まっております。
これを裏付けるように厚生労働省の調査では、子どもの虫歯の割り合いが急激に減少していることがわかります。
昭和62年に6歳だった子どもが虫歯になる確率(乳歯・永久歯)は91%と、ほとんどの子どもが虫歯を経験しておりましたが、平成23年に6歳だったの子どもの虫歯率は42%となっており、近年の虫歯率は改善傾向にあります。
子どもの虫歯は減少しておりますが、残念なことに大人の虫歯は改善されておりません。
ここでは、子どもより大人の方が虫歯の割り合いが多い理由を説明していこうと思います。
なぜ大人の虫歯は改善されないのか
厚生労働省の調査によると、大人の虫歯は平成5年から平成28年までに割り合いが増えていることがわかります。
出典:歯科疾患実態調査(厚生労働省)
大人の虫歯には、過去に治療した歯が原因となることが多いようです。
虫歯を治療する際は、歯を部分的に削り詰め物やかぶせ物をします。詰め物やかぶせ物をした箇所は、長い年数が経過すると、金属である詰め物やかぶせ物の形状は徐々に変化してきます。
その結果、詰め物やかぶせ物と歯の間に隙間ができ、プラーク(歯垢)がたまる状況が生まれ、プラークの中にいる虫歯菌により虫歯が再発します。
詰め物やかぶせ物は表面からは見え難いため、気付いたときには虫歯が進行していることが特徴です。
近年ではプラスチックやセラミックのかぶせ物があり、かぶせ物が変形してしまうことも少なくなりました。
しかし、歯の詰め物やかぶせ物には寿命があるため、定期的に歯科医院を受診して再治療を受けることをおすすめします。
大人よりも子どもの方が虫歯になりやすい
大人の虫歯が改善されない中、子どもの虫歯は改善傾向にあります。
しかし以下の理由から、大人よりも子どもの方が虫歯になりやすいことがわかります。
本来、歯の表面はエナメル質で覆われており、このエナメル質は歯を保護する役割を担っております。
しかし、乳歯のエナメル質は永久歯に比べて量が少なく保護の役割が不十分なため、乳歯を持つ子どもは虫歯になりやすいことがわかります。
虫歯を予防するには歯磨きが欠かせません。子どもの歯磨きには磨き残しが多いため、大人に比べると虫歯になりやすいと言えます。
また、いかに親が子どもの歯磨きをサポートしていても、口内の食べ残しによる違和感は本人にしかわからないため、大人よりも磨き残しとなることがあります。
大人にも言えることですが、糖質の摂取量が多かったり、間食が多かったりすると虫歯になりやすい傾向にあるようです。
また食事にかかる時間が長い場合にも注意が必要です。食事をすると口内は酸性に傾き、とても虫歯になり易い状態になります。それを補うために唾液がアルカリ性に戻す役割をしておりますが、食後すぐにお菓子やジュースを含むことでせっかく酸性からアルカリ性に戻そうとしているところがまた酸性へと傾いてしまい、虫歯になりやすい環境をつくることになります。
大人よりも子どもの方が虫歯になりやすいにもかかわらず、子どもの虫歯の割り合いが急激に減少しているのは、保護者の意識と行動の変化が挙げられます。これは虫歯が治療から予防へシフトしていることが大きく関わっております。
自治体での小児医療費助成制度の拡充により、医療費負担が軽減されたことや、妊娠中から口腔ケアに関する講座が開かれるなど、保護者の意識と行動の変化が非常に大きいと言えます。
大人の虫歯の特徴
大人は虫歯よりも歯周病になりやすいと受け取られることが多いですが、大人でも虫歯の発生は頻繁に見られます。
大人の虫歯は下記のような3種類の特徴に分けられます。
- 歯と歯の間や歯ぐきに接する部分などから発生する虫歯
- 詰め物やかぶせ物と歯の隙間から発生する虫歯
- 歯周病が原因で根面が露出した部分に発生する虫歯
また平成28年の歯科疾患実態調査によると、20歳以上の9割以上が虫歯の経験があり、20歳以上の3割が未処置の虫歯があるようです。
さらに歯を多く持つ高齢者が増えた結果、高齢者の虫歯は以前に比べて大きく増加しております。
まとめ
子どもより大人の方が虫歯の割り合いが多い理由に、詰め物やかぶせ物の寿命により発生する虫歯は少なくありません。
また虫歯がなくても歯周病から虫歯に発展してしまうケースもありますので、定期的に歯科医院を受診して常に健康な歯にしておくことが大切です。